結婚式で訪れた町に、新しくスーパーができたというので、母親と一緒に行ってきた。
”あんたも おめかしして行かんばよ!”
実家の近所にあるスーパーに行くときは、いつもはエプロンを身につけて行く母だが、この日は珍しくおしゃれをしていた。
”スーパーで買い物とに、そんなにお洒落にせんでもよかたい!”
と返事をした僕は、新しくできたスーパーに入った瞬間に、母がお洒落をする理由がわかった。なぜなら、カートを引いているおばさま方の雰囲気が明らかにいつものスーパーとは違ったのである。
明るい店内、綺麗に陳列されている商品たち。そして会話するおばさま方・・・お口に手を当て、「オホホ」とお上品に笑っているのである。そんなセレブリティあふれるおばさま方に圧倒されながらも、草木で多い茂った林の中を進むように僕は前へと進んだ。
そして、目的のお肉コーナーに着いた時、僕は開いた口が塞がらなかった。隣にいた母もきっと同じ状態だったと思う。
なぜなら、、”お肉のお値段”が非常にお高いんです。
いつものスーパーにある、最上級のお値段が、このスーパーでは最安値。完全にくる場所を間違えた母。ついでに僕。
それでも何も買わないわけにはいかないので、母はいつものように、”一番安くて美味しそうなお肉”を籠に入れた。ただこの時も”安くて質のよいものを買う”という母の軸はブレなかった。見栄を張ることがない母親のハートの強さを改めて感じた。
その後僕らは無言で、他の商品棚にも目を向けることも無く、一直線にレジへと向かった。その途中、僕はさらに衝撃的な場面に遭遇することになる。
なんと、恐らくおつかいで来ていた6歳ぐらいの子が、店員さんに「オーガニック納豆をください」と尋ねていたのである。僕は、6歳ぐらいの小さい子が”オーガニック納豆”という言葉を操っていたことに衝撃を受けた。
恥ずかしながら、僕がオーガニックという言葉を知ったのは、6歳よりもずっと後だ。それなのに、6歳くらいの子が普通に使いこなしてる。僕が6歳の頃は、女の子のスカートめくっては先生に注意されていた年頃である。
そして思いました。
育つ環境が、子供の成長に影響を与えるのは僕が思っていた以上なのかもしれない。と。
なぜなら、人は何かを考えたりする際には、頭の中で知っている言語(語彙)を使って考えると思うんです。つまり、言語(語彙)が人の思考に重要な役割を持っている!と。
知っている言語や語彙が増えれば、それだけ思考の幅が増えるはずです。思考の幅が増えれば、今までとは違った新しいものの見方ができるのではないのかな?と。
そして、新しいものの見方ができるようになれば、少なくとも生きていく上でのヒントになると思っています。
こんなことを、お店を出てからずっと考えていました。
これからも我が家の食卓にはオーガニック納豆が並ばないことを憂いながら。
おわり。